二〇一一年九月二三日

僕が働いてゐるキャバクラに戀人と友人のTが來た。僕はTの隣に、他の女の子が戀人の隣に座つて、僕の真向かひが他の女の子、右斜め前が戀人、そして僕の右隣にT、と云ふ形で座つてゐた。暫く皆で軽くお酒を呑み乍和やかに談笑をしてゐた。
途中で僕と戀人が一緒に行かうと約束してゐたライヴの話になつた。僕は戀人と「27日如何する?何処かで待ち合はせしてから一緒に行く?」等と話してゐた。其の後なかなか呑ませて呉れないと云ふ些細な理由から僕と戀人は険悪な雰囲気に為つて仕舞つた。戀人の隣についた女の子には身振りで「御免ね、今はゆつくり話させて」と合図をした。そこでTが(彼はとても優しい)戀人に「いやいや☓☓さん、云ひ方きつく為つてますよ。『行けば?』が(冷たく語気を荒げて)『行けば?』に為つてますよー。みっちゃん困つてるぢやないですか。」等とフォローをいれた後に「これでいゝやろ?」と僕にこつそり耳打ちをした。お陰で戀人も少し落ち着いていつもよりは冷たいけれど優しさを取り戻してゐた。

それから僕は酔ひ潰れて寝て仕舞つた。起きると女の子の数も増えてゐて見知らぬ男の人もゐてシャンパングラスが沢山並んで女の子も皆お酒を呑んでゐた。僕には呑ませなかつた癖に他の女の子にはどんどん呑ませてゐた事に腹がたつた僕と戀人はまた喧嘩に為つた。

戀人が店を出て僕も仕事が終はつた後に道端でお店の女の子と話してゐると偶然戀人が通りがゝった。けれど聲はかけて呉れなかつたので僕は如何し様か悩んでゐた。其の侭暫くTに相談しようかな等と考へ乍一人でぶらぶら歩いてゐると先刻とはまた別のお店の女の子が二人ゐて其の内の一人が「さつきはいゝお客さん呼んでくれて有難うね!」等と話しかけてきた。其の時事情を知つてゐる最初に戀人の隣に座つたもう一人の女の子が其の話に持つていかない様にと暗に話を流した。彼が僕の戀人である事をもう一人の女の子に告げると「嘘〜?!」と其の子がびつくりした。僕は改めて事情を伝へ僕が睡つてゐた間に何が起きたのかを軽く教へて貰つた。さうしてゐる最中と戀人とすれ違つた。僕は「☓☓!」と彼の名前を呼んだけれど彼は無視して通り過ぎて行つた。

戀人にメールをしても返信もなく、いよいよ僕が如何したらいゝか分からなく為つた時に今日は給料日だつたのにお店で給料を貰ひ忘れたことを思ひ出したのでお店に戻ることにした。お店に戻つて給料を受け取ると店長が「秘蜜、寫眞撮影いつにする?」と訊いてきた。僕が「あ、この日なら大丈夫です。」と伝へると「さつきのお客さん凄いねー有難うねー。」と云はれたので「あれ、僕の彼氏なんですよ。」と返すとびつくりされた。そんな話をし終はつた後にベースを持ち帰り忘れた事にも気付いた。

ベース本体は更衣室にあつたのだけれど、如何してもベースケースが見つからず困つて仕舞ひお店にゐた女の子何人かに訊ねたけれど何処にもベースケースは見当たらなかつた。僕の次の出勤は四日後で四連休の間にベースに触れないと思ふと耐え難く、僕は必死でベースケースを探したけれどやはり見つからなかつた。