二〇一一年二月一日

僕は母とHと3人の男と住んでゐた(その内二人は現実世界での僕の友人でもう一人は坊主頭の見知らぬ男だつた)。Hは僕に優しかつたが、母や男達は僕によそよそしく、そして同時に冷たかつた。僕はH以外とは殆ど会話がなかつた。

ある日Hが僕に「蜜仔さんは今日、映画と食事どちらに行くんですか?」と訊いて來た。如何やら母と男達は二手に分かれて映画と食事に出掛けるらしかつた。僕は誘はれてゐなかつたのでその時初めてその事実を知り「え…」と困惑すると同時にとても哀しく為つた。僕だけ除け者にされてゐたのだ。Hはそれを見て「まア俺はどつちも行かずに家にゐますけどね。」と云つて呉れた。(恐らく彼は其の前に両方とも誘はれてゐて本当に外に出るのが面倒でどちらの誘ひも断はつたのだらう)

―場面が移る。―

その家には割と大きめの茶の間があつた。中央に新しくはない大きい木製の食卓と八人分程の同じく木製の質素な椅子が並び、皆食事を摂る為に席に着いてゐた。僕は左側の一番奥の席に座はつてゐた。母は僕とは丁度点対称の位置に座つてゐて、Hは僕の向かひ側に座つてゐた。見知らぬ男は母の向かひに座り、他の男達も席に着き―つまりその家に住む全員が―皆ご飯を食べてゐた。母が炊飯器から皆にご飯をよそう。僕には僕専用の炊飯器があり、僕だけそこからご飯を食べなければいけなかつた。僕が炊飯器の蓋を開けると、中には一号よりも少ない程度の白米が、最早白米とは云へない状態にこげつきこびりつき茶色くカリカリになつて入つてゐた。他の皆のご飯が入つてゐる炊飯器の中には美味しさうな白米が入つてゐた。
僕が「如何して僕だけ炊飯器が別なの?」と問ふと、一人残らず沈黙した。