愛と夢と希望を売つて生きてゐます
一八歳の頃から、愛と夢と希望を売つて生きてゐる。
結局其れはニセモノなのだらうけれど、其れでもさうして生きてゐる。
そんな事を、テキーラ煽つて上機嫌な儘に歩いてゐた新宿にて気付かされたのだ。
誰かを心底愛したことや、誰かに心底愛された事があるか如何かを僕は知らない。
そんな事知つたこつちやないけれど、なんだかまア其れは其れで如何でもいゝや。
人に対してとか、ぢやない。
別に其れだけに限つたことぢやなくて。
何かを成し遂げるにも、何かを守るにも、何かを抱くにも、何もかも。
愛が一番大事ぢやないかつて、ふと思つたのさ。
果たしてそんな僕にも、心底愛してゐるものは、ひとつだけ、たつたひとつだけあるんだけどね。
多分、僕の中で一番一番大切なもの。
失くしちやだめなもの。
呼吸を始めて二二年目にやうやく見つけたもの。
其れだけは、何があつても守りきらうつて、先刻僕は、さう思つたんだ。