二〇一一年二月二四日・其の弐

昔の戀人に数日前に貸した三〇〇〇円を返して貰ひに行つた。普段なら三〇〇〇円だなんてなんてこともないのだが、今の僕は体調を崩しずつと仕事に行けず、医療費ばかり嵩んで其の日暮らしのお金にも困つてゐたのだ。

本当にあいつに返す気があるのだらうか、と不安に思ひつゝも待ち合はせ場所に向かつた。すると彼は僕の財布を勝手に取り上げ、諭吉一枚とJCBギフトカード数枚を入れた。僕が「お釣り細かいのないよ。て、云ふか何今の?」と云ふと「いゝよ、とつとけ。」と彼は云つた。彼がケチなのは知つてゐたので―なんせデート代は全部女の子が出すものだと本気で思つてゐる様な奴なのだ。付き合つてゐた当時、とあるデートの日に彼が僕の為に二〇〇〇円弱を遣つたのだが「俺、女にこんなに出したの初めてかも。」と云つたくらゐに。―とても不思議に思つた。

家に帰つてからニュースを見た。テレビで殺人のニュースが報道されてゐる。「神奈川県横浜市で老人女性殺害」「家の中に争つた形跡は無し」「殺害後と見られる後にキッチンが掃除されてをり…」ニュースの報道の内容を見て、「嗚呼、あいつ、遂に自分のお祖母ちやんを殺したんだ。其れでそのお金をとつて來たんだ。捕まるのも分かつてゐて、だから最後に僕にお金を呉れたんだ。」と僕は思つた。